-チェンバロ製作の記録2-

鍵盤

 キーの調整はとても時間を取られる工程です。しかしこれを自分で行えば、後々必要なメンテナンスの技能を確実に得られます。そういう意味でも自作はお勧めです。張弦、ジャックの調整、ヴォイシングにも同じことが云えます。ですから、木工完成品のステージ4から始めたとしても大きな意味があるでしょう。無塗装の久保田BASICの購入を検討するならば、断然こちらの木工完成品を選ぶべきでしょう。


 

 

塗装

 響板の塗装は天然のシェラックです。付属のフレークからアルコール溶液を作ります。簡単でとても美しい仕上がりなので、余ったものはスタンドと譜面立てにも流用しました。




 

響板、ネームボード

 響板に花の絵を描きます。注文すると、どこへ頼んだとしても数十万円です。弦を張った後は、もう描けません。自作のメリットです。

 ネームボードは、普通、製作者の名前を刻みます。しかし私は妻の名を入れました。家族の理解と協力は不可欠ですので。

 

 

張弦

 弦は、説明書に従ってループを作り、ヒッチピンに掛けます。そしてチューニングピンに巻き付けレストプランクの穴に刺します。これは意外と大変な作業です。これを100回やると指の腹が痛くなります。特に太い弦は硬いので辛いです。ちなみにヒッチピンは数が足りませんでしたので、またしても送ってもらいました。
 余談ですが、ズッカーマンのチューニングピンは私のとても気に入っているところです。というのも、他のメーカーでは全体の形も装飾もアンティークな装いなのに、なぜかピンだけはモダンピアノみたいなデザインだったり一直線の配列だったすることが多いからです。ただ、この配列が禍してか、穴のあけ漏れが一か所ありました。自分であけました。説明書は全ステージ共通なので、たいして問題無く出来ました。

 

 弦を張ったら、ナットピンを打ちます。ヒッチピン、ブリッジピン、チューニングピンの穴は最初からあいていますが、ここだけは調整が必要なので、自分であけます。調整は付属のゲージを使いますが、もうここでヴォイシングの一歩が始まっています。なぜならジャックと弦の距離でプレクトラの長さが決まるからです。強いフロントを実現するため、低音域ではジャックと弦の距離をわずかに短くずらします。短くしなりの少ないプレクトラムは強い音を出すからです。逆に、長くしなりの良いプレクトラムは柔らかい音を出すわけです。

 

 

ジャック

 ジャック はプラスチック製です。そう聞くとがっかりする向きもいらっしゃるのではないでしょうか。実は私も最初は少しそうでした。しかし今は大変満足しています。一つには、ズッカーマンのプラスチックジャックがとても単純な構造で信頼性が高いから。そしてより大事なことは耐久性です。それもタングのスリットの耐久性です。木製のタングに何度もプレクトラムを刺し直すとスリットが広がってしまう恐れがあります。プレクトラムは時々折れます。製作時に一回で済ますことが出来たとしても、この先プレクトラムの交換は幾度となく行うことになります。ですからプラスチックのタングはとても心強いです。しかもプラスチックだからといって、音に差があるわけでもありません。三創楽器のウッドジャックもタングはプラスチックです。それには理由があるのです。 

 それでも気に入らないという人は、オプションで木製ジャックを選べば良いでしょう。しかしその場合でも、一度プラスチックジャックを試してみることをお勧めします。木製ジャックは後からでも購入できます。


 
 

完成